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アップルの商標は1枚の葉っぱと歯形が付いたリンゴという最も有名な商標の一つです。しかし、その象徴的なステータスをもってしても、アップルの商標を保護することは常に容易であるとは限りません。商標が様々に受け止められるといういくつかの例をご紹介します。
最も有名な商標の一つはアップル社のおなじみのロゴです。当然、アップルはこのロゴに類似する他の商標から自社のロゴを保護しようとしています。このロゴとその保護の範囲に関する数件の訴訟事例があります。
最近、あるデザイン化された文字が商標として申請されました。この文字には歯形があり、葉っぱも付いていました。デザイン化された文字の中でもこれはかなり珍しく、アップルはスイス当局に商標侵害の異議を申し立てました。スイス当局はデザイン化された文字は混同を招くほどアップルのロゴに類似していないと結論しました。
別の例では、アップルは歯形と1枚の葉っぱが付いたリンゴを表したAPOの商標申請に対して異議を申し立てました。その商標はカメラと当該製品の販売に関連するサービスを対象とするものでした。この事例では、一般裁判所は申請された商標が上記のアップルの商標にきわめて類似していると判断し、リンゴと歯形を含むAPOの商標申請を却下しました。
同じアイデア?– 別の果物
2019年1月31日、一般裁判所はアップル社の商標保護に関する別の判決を下しました。この事例では、別の企業がナシのデザインの下に「pear」という文字が追加された商標を申請しました。この「pear」の商標はコンピュータとコンピュータ関連サービスを対象としていました。アップルはこの申請に対して異議を申し立て、両者の対立は本件が最終的に一般裁判所に持ち込まれるまで続きました。一般裁判所は両社の商標は相違するもので、アップルは自社の商標を根拠に「pear」の商標申請を阻止することはできないと結論しました。
商標の作成はこれに止まりませんでした。歯形が入った他の種類の果物についても商標が申請されました。数年前、歯形とBanana Computerという文字が入ったバナナを表現した商標とBanana Mobileという文字が入ったもう一つの商標がEU商標に申請されました。アップルは両方の商標に対して異議を提出し、Banana ComputerとBanana Mobileの商標は混同を招くほどアップルの商標には類似していないという異議部の判断が下ることで両者の決着がつきました。念のためにお知らせすると、アップルはその決定に抗議しました。しかし、返答の不在から、審判部はこれらの案件の事案の判決を下す機会がありませんでした。
APOの商標申請はアップルの商標との類似性がきわめて高いという理由で却下された。「Pear」の商標に反して、異議部の判断によればBanana ComputerとBanana Mobileの商標は混同を招くほどアップルの商標には類似していない。写真:EUIPO
当局の反応は?
商標争議において、当局は商標が視覚的、音声的、概念的に類似しているかを判断材料とします。さらに、当局は争点となっている商標が使用される商品やサービスが同様の、または類似する商品またはサービスに包括されるか否かを検討します。両方の要件が満たされた場合、商標は混同を招く程度に類似するものと判断されます。
人々の間でよく知られた有名な商標はさらに広いレベルで保護されています。それは、商標と商品及びサービスの両方の類似性の程度に該当します。幅広い保護は、商標の所有者がそれが一般によく知られたものであることを主張できるという点にあり、所有者はさらに当局に対してその主張の正当性を示すことができます。主張する、あるいは主張の正当性を示すことができない場合、平均的な商標とみなされます。
商標の評判は重要であるが、それがすべてではない
上記の「Pear」の事例で、アップルは同社の商標の一つは評判を確立していると主張しました。EUIPOの異議部と審判部はいずれもこれを認め、両当局は商標と商品及びサービスが類似するものであるとし、これらの商標はきわめて類似性が高いと判断しました。この判断は告訴を受け、一般裁判所はこれらの商標を相違するものとして、審判部の判断を覆しました。
商標専門家の意見は?
顕著な装置的要素を示している商標でさえ、そのアイデアについて所有者に保護を提供するものではないということを指摘することは重要です。新規の商標申請を阻止することができるかは、容易に評価できないいくつかの要件に依拠しています。弊社は時々何らかの商標の保護の範囲について尋ねられることがありますが、当然、高い水準でこれを予測することは可能です。一方、アップルのロゴとPearのロゴの事例が示すように、商標は様々に受け止められ、当局でさえ商標の保護の範囲の評価は分かれます。しかし、弊社が推奨することは、商標を登録するのみならず、訴訟を慎重に選び、勝訴に結びつけるために、商標はできる限り固有性が強いものを慎重に選ぶ必要があるということです。
商標に関するご質問は、弊社の専門家にお問い合わせください。