植物の特許に関する更新

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11月5日に既にご報告の通り、欧州特許庁技術審判部(案件T1063/18)は、本質的に生物学的過程により生成された植物が特許申請可能であるという驚くべき結論に達しました。次のように明確に述べている2017年の欧州特許条約(EPC)の修正規則28(2)にも関わらず、審判部はこの結論に達しました:

「第53(b)条の下、欧州特許は、本質的に生物学的過程のみにより得られた植物または動物に付与されない。」

EPOの38締約国の代理人は欧州特許庁とT 1063/18判決後の解決策を検討する必要性について協議し、本件は拡大審判部に照会され、本質的に生物学的過程のみにより得られた植物の特許性に関する意見を要請しました。この照会により最近の法的展開が明らかにされました(欧州特許条約とEUバイオ指令の解釈に関する欧州委員会、欧州理事会、欧州議会及び欧州特許庁管理理事会の解釈と声明において、このどれもが当該案件に特許性は認められないと結論しました)。本件はG3/19として登録されました。

T 1063/18の概要については こちらから2018年12月21日の更新をご覧いただけます。

2019年4月9日の拡大審判部への照会に続き、判決が拡大審判部の判断に全面的に依拠するEPO審査部及び異議部に照会された全案件の「手続きの停止」が決定されました。この手続きの停止は請求項の発明事項に本質的に生物学的過程のみにより得られた植物または動物が含まれる特許出願または特許に関連するものです。植物に関連するその他の発明を申請する特許出願または特許に影響はありません。

事態をより複雑にしている要因として、T 1063/18の判決は過去の判決に矛盾しないという理由等を根拠にして拡大審判部への照会は容認されないという主旨を述べた第三者からの申立が既に提出されています。

欧州特許庁は「当庁は欧州特許システムの利用者と一般人の利益のために法的安定性を完全かつ迅速に回復するよう努力します」と述べていますが、この照会の意味するところは恐らく「本質的に生物学的過程のみにより得られた植物」に関してどのような点に特許性が認められるかということに関して早期の解明はなされないということです。このような照会の過去の事例が示しているのは、特に判断がなされる前に一般人への意見聴取が行われるという理由で、拡大審判部の判決が下るまでの過程に長時間を要するということです。 いずれにしても、現時点での植物に関する特許性の不明確性から、上記のような植物及び植物を生産する過程の特許性に関する案件に関して専門的な助言を得ることが推奨されます。これは、本質的に生物学的過程のみにより得られた植物を取り扱う自由に関して助言を必要とする植物育種家などの第三者も該当します。

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