ブレキシットが貴社の知的財産権にもたらす影響は?

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2016年6月23日に英国で開催された国民投票にて英国が欧州連合を離脱し、ブレグジットが現実化することが決定しました。欧州で知的財産権を所有する権利者は、保有する権利の現状と今後について、多くの疑問が生まれたことでしょう。本稿では、ブレグジットが知的財産権にもたらす影響について考察します。(2017年3月14日更新)

欧州特許

現行の欧州特許、すなわち欧州特許庁(EPO)に行う一の出願について一の審査が行われ選択する加盟国に移行手続きを行う欧州特許に関しては、英国が欧州連合を脱退することによる変更はありません。欧州特許システムは欧州連合からは独立したシステムで、欧州連合加盟国と非加盟国の両方が加盟しているためです。

単一効特許および統一特許裁判所(UPC)

単一効特許システムと統一特許裁判所は、ブレグジット投票によって一時的に頓挫しましたが、2016年11月末に英国知的財産権庁による批准見込み、すなわちブレグジットにも関わらず新制度には参加するとの声明の後、再び順調に手続きが進んでいます。最新の制度開始予定日は2017年12月1日です。

補充的保護証明書(SPC)

特許取得後の医薬品及び植物に関する製品のための補充的保護証明書制度は、欧州連合の規則の下で付与されるものであるため、英国が欧州連合を離れると英国では保護が受けられなくなります。英国で現在有効な補充的保護証明書が欧州連合離脱後もその効果を維持し続けるために、適切な英国の国内法が整備されることが期待されます。同様に、英国での保護のための新たな補充的保護証明書に関する、英国国内法が制定されることが予想されますが、その内容が現在の欧州補充的保護証明書システムと同様となるかどうかは不明です。

商標について

英国が欧州を脱退すると、既存の欧州商標(EUTM)は英国では有効ではなくなります。しかしながら、欧州商標を英国の国内商標に変換するための移行措置が採られることが期待されています。英国における商標保護は、将来的には国内出願を経ることとなり少なくとも数年の時間的な猶予を持つ必要が出てきますが、英国を重要な市場として持つ場合には、英国と欧州の両方に出願することを検討することとなるでしょう。
商標に関しては、取消のリスクを回避するために商標の使用が要件となっていることが問題を複雑にします。例えば、英国でのみ使用されていた欧州商標が欧州連合内での不使用で取り消される可能性、または欧州商標の英国国内商標への変換は英国での使用または使用の意図が要求される可能性があります。

意匠

欧州商標の場合と同様に、既存の登録共同体意匠(RCD)は、欧州連合を離脱後は英国で有効ではなくなりますが、国内意匠に変換するための移行措置が採られることが期待されます。

結論

以上の議論から明らかなように、ブレグジット後、知的財産権について発生し得る問題の先行きは不透明であり、明らかになるまで時間がかかることが予想されます。弊所は適宜状況を観察し、最新情報を掲載いたします。