ヘッダーイメージ: Euipo.europa.eu
2016年3月23日の新規則施行発表に続き、2017年10月1日に改正規則2017/1001(EUTMR)、改正委任規則(EUTMIR)、改正施行規則(EUTMDR)が施行され、さらに改訂ガイドラインが発表されました。今回より数回に渡って改訂箇所をまとめます。
なお適用は出願日を基準に施行日以降の出願について適用され、遡って無効となることはありません。
第ニ回は一般的なルールの変更事項と、審査における変更点の一部についてです。
1.庁とのコミュニケーション手段について(EUTMDR 56-59, 63)
①電子的な方法(ファクシミリ、ウェブサイトのユーザーエリア)、②郵送・クーリエ便、③公示に限ると変更されました。
ファクシミリは2018年1月1日より徐々に廃止され、今後はウェブサイトのユーザーエリアでの手続きが主となる見込みです。
2.庁が設定する期限について(EUTMR101(1))
在欧州経済域者、在外者いずれについても、1月以上6月以下とされました。
3.優先権について(EUTMR34)
方式的要件は現行通り審査されますが、実質的要件、すなわち有効性の判断は関連する時に延期されます。
関連する時とは、異議申立、取消手続きの時ですが、実際に関連するのは本願の出願日が先願とされる出願の前であって、先願の優先日が本願の出願日の前である以下の場合です。
方式的要件とは以下の3つを満たすことをいいます。
①いつ:出願と同時、または同日
②何を:先の出願の出願番号、出願日、国名
③優先権証明書:日本出願の優先権を主張する場合には、優先権証明書(原本不要)に加え、第一言語または第二言語の翻訳文が必要
4.証明商標制度の導入(EUTMR83~93、EUTMIR2(3)、17)
主体的要件:自然人または法人であって、証明される商品・サービスの提供に関する事業を行っていない者(EUTMR83(2))。商標権者に使用する権利を付与されたものだけが使用できる
保護対象:材料、商品の製造方法もしくはサービスの提供方法、質、精度またはその他の特徴(ただし地理的表示を除く)について証明された商品・サービスとそれ以外商品・サービスを識別可能とするもの。(EUTMR83(1))
手続き:証明商標である旨の表示、手数料1500ユーロ(電子出願の場合、通常商標より高額)の支払い。
出願日から2月以内に、商標を使用可能な者、証明対象、証明対象の検査方法、使用の管理方法、認可・罰則方法に関する出願人の規則を提出(EUTMR84)
拒絶理由:通常出願の絶対的拒絶理由(EUTMR7(1))の他、主体的要件(EUTMR83)を満たさない場合、出願人の規則が要件を満たさない場合(EUTMR84)、公共の利益に反する場合(EUTMR85(1))、公衆に誤認を生じさせる場合(EUTMR85(2))、
留意点:団体商標(collective mark)として登録されているものを証明商標に変更不可。欧州連合加盟国であって証明商標制度を有している国への変更可。
5.使用により獲得した識別性の主張(EUTMIR2(2)、EUTMDR 27(3)(a))
時期:出願時、最初の拒絶に対する応答時まで。審判段階では不可。
種類:PrimaryまたはSubsidiaryとして主張可能、両者の区別は主張の時期。
Primaryは、出願時または拒絶応答時に主張するもので、標章本来の識別性の有無と獲得された識別性についての決定が1通で行われる。
Subsidiaryは、一度(識別性を有さない旨の)決定が出た後に証拠を提出し、獲得された識別性についての決定が行われるもの。