Wilgart: 商標を変更したキャップメーカー

コペンハーゲン北西部のある地下の奥から、ミシンのかすかなハミングが聞こえます。ここは、サイラス・ゲルトナー氏が、ツイード、革、魚の皮などの高級素材からキャップを製作する小さな工房です。サイラスはドイツでキャップの古い技術を学び、現代風にアレンジしてオリジナルの帽子を製作・提供しています。

サイラスの会社Wilgart社を動かしているのは技術への熱意です-素材がどこから来たのか、製品の背景にある物語を大切にしています。帽子にかける彼の熱意に全く疑いはありません:

「世界で一番スタイリッシュなキャップと帽子を作る男として知られたいのです」とサイラスは言います。

サイラスは2013年に開業し、開業当初は“Sigar Hats and Caps”という名称で事業を行っていました。この名称は 彼の名前”Silas Gärtner”の短縮形であり、Sigarという言葉は彼の帽子の世界観に合っていると感じていました。

EU商標の登録

将来的に欧州全域で彼の帽子を販売する目的で、サイラスはロゴと共に”Sigar Hats and Caps”をEU商標登録出願しました。

サイラスは、彼の商標が登録されないリスクがあるとは想像もしませんでした。ある大企業の名称と類似し混同するとして異議が申し立てられたとき、非常に驚きました。

サイラスは、専門家のアドバイスの必要性を認識し、プローマンヴィントフトの商標・法務チームにコンタクトしました。

「問題が起こるとは思いもしませんでした。この大企業の名称の綴りは私の名前の綴りと完全に異なります」とサイラスは話します。しかし弊所商標専門家アネルイーゼと話した結果、本件が単純ではないことを知りました。

幅広い商標共存協定

サイラスの予算は限られていました。アネルイーゼは異議申立人の大企業が商標共存協定を結ぶ友好的な意思があるかどうかを探るために、サイラスから連絡を取るよう勧めました。サイラスは企業側と実り多き対話を持ち、サイラスがどんな文脈で名称の使用を許されるかについて定義した協定を作成することに合意しました。

残念ながら、この協定は広範囲にわたることが判明しました。何よりもサイラスは、彼の名称の下で帽子を除くいかなる製品の生産もできず、さらに使用は常に名称とロゴのセットで使用されることとなっていました。それは、正確にはサイラスが望んでいたものではありませんでした:

「それは私の創造的なプロセスを制限すると思いました。そのとき既に、キャップとマッチするようなネクタイとナットについてのアイデアがありました。私が協定にサインすると、ロゴなしで名称をキャップに付すことさえできませんでした。それは非常に大きな問題で、デザインを破滅させる可能性がありました。」

SIGARHATS_værktøj

新商標 新しいアイデンティティ

アネルイーゼのサポートの下、サイラスはよりよい協定を得るため協議しましたが、企業側が若干譲歩した後も大きな障害がありました。数ヶ月間この問題を考えた後、サイラスは協定を拒絶しWilgart™へと会社名を変更するという難しい決定をしました。

「個人事業主にとっては、あなた自身があなたの会社です。たった一夜で個人のアイデンティティを変更したりしません。それが当初、私が名前を保持し協定を結ぼうとした理由です。しかしどこかで常に協定へのサインが悪いアイデアであるとわかっていたと思います。今後、常に慎重でなければならないことは望みません。完全に制約がない方が良いに決まっています。」

Wilgart™は、サイラスのミドルネームであるウィルヘルム、および彼の姓ガートナーの短縮形で、サイラスはこの新しい会社名にアイデンティティを与えました。サイラスは徐々にこの名称が気に入ってきました。今や、彼はそれを元の名称のよりもよい開発であり改良とである考えています。

たとえキャップの新ラベル、店舗の看板、販売促進品等を製作することによって、彼の会社のブランディングを全くの最初から始めることが大きな作業であっても、ブランド名がより広く認識される前に、この作業をすることとなったことを喜んでいます。

「名称変更は非常に賢く行わなければ、Sigarとして私を知っていた90パーセントの顧客を失ったでしょう。また、ビジネスが成長した後に大企業が私に連絡してきていたら、それはいっそう大きな問題だったでしょう。もし権利を所有しない商標を使って既に数千の商品を売っていた場合、多くの問題が起こるものと想像します。」

起業時に商標保護を検討しましょう

サイラスは、新ブランドのアイデンティティに達するために、多くの費用と労力を費やしましたので、すべての新興企業に対し商標を保護するようアドバイスしています:

「もし成長する野心があるならば、起業当初から名称の保護を考えるべきです。保護しない場合には、ビジネスのブランディングをもう一度行わなければならないリスクをとることになるのです。」

SIGARHATS_symaskine

サイラスの商標のケースについてアドバイスした商標エキスパートのアネルイーゼ・アナセンは、商標保護が新興企業になぜ決定的であるかをこう説明します:

「商標保護は2つの直面する保険です:あなたの商標をコピーしようとしている第三者から自身のビジネスを保護し、同時に、第三者の商標権の存在を知らずに侵害してしまうことから自身を保護するのです。あなたが実際に販売を開始してビジネスを行う前に、商標としてあなたの会社名と製品名を登録する必要があります。もしそうしないならば、多くの費用を要しても、最悪のケースシナリオはブランディングを最初から始めることになります。」

サイラスは彼の新しい社名について欧州商標を取得し、さらに帽子のつば部分と裏のアジャスター部分について意匠権を取得しました。www.wilgart.comよりサイラスが製作するキャップの詳細をご覧ください。